INTERVIEWわたしのセルフメディケーション

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「若い時のやせは、将来の健康にも影響してくるのです」

女性のやせすぎは、様々な健康リスクを招く原因に。その一つに、近年増加傾向にあるのが低体重児。若い時の栄養不足は、将来的に健康を損なうことにもつながります。今回は、女性のやせとその背景にある現代女性が抱えるライフスタイルとの関係性を、林先生にうかがいました。

なぜそうした歪んだイメージを持ってしまうのでしょうか。

以前は女性誌などのメディアがやせたモデルを礼賛したり、ダイエット特集であおったりとかということがありました。きっかけが友人の「太ったね」の一言だったり、「女性は痩せている方が良い」といった社会文化的な規範に適応しようと過敏になっているのかもしれません。親がやせに肯定的だと子供も自然に重視する傾向も指摘されています。個人的にはこのデジタル社会のなかでSNSなどの影響もあるかもしれないと思いますね。やせた女性の掲載写真に「いいね」がたくさん付くとか、ターゲット広告に惑わされるとか。

でも昨今は、日本のメディアも極端なダイエットをあおることを自粛していますし、ヨーロッパではやせすぎのモデルはショーに出られないなど規制もあります。ミス・ユニバースを目指すような人たちも、健康的な美の追求ということで、食事をおろそかにしないことをすすめています。しかし、事実として、若い女性のやせの割合は高い傾向が続いています。

若い時の低栄養は赤ちゃんだけの問題ですか?

若い時のやせは、生まれてきた赤ちゃんが成人後に生活習慣病にかかりやすくなるといたリスクだけでなく、女性自身の健康にも影響が出ます。例えば、貧血や疲れやすいといった症状により日常生活に影響が出るほか、高齢期になってからの骨粗しょう症や骨格異常、寝たきりのリスクを高めるロコモティブシンドローム(運動器障害)との関連も指摘されています。やせは若い頃に十分な栄養をとっていないということですから、それが潜在的な低栄養状態を生み、将来的に骨密度や筋肉量の低下などの問題につながるのですが、このあたりは軽視されがちなのです。若いと自覚症状としては表れにくいですが、私たちの体は私たちの食べたものでできていますから、影響は確実に出ている、と考えなくてはなりません。

働く女性は「食事を整える力」が弱いのですか?

私は、栄養教育・保健指導を専門に研究しています。今ちょうど、「女性の健康の社会的決定要因」の研究に携わっていますが、個人の食行動などのライフスタイルが、所得や就労といった社会的な要因とどのように関連し、健康にどのような影響を与えているかについて調べています。

例えば、働いている女性は、専業主婦に比べると、食事をとる時間が遅くなったり、朝食を抜いたり、出来合いのもので済ませたりとなりがちであることが報告されています。その結果、栄養が偏ったり、エネルギー摂取が不足する傾向がみられたり、そもそも「食事を整える力」が弱いということもわかってきました。働き方そのものが、健康を支えるための望ましい食生活の実現において大きな障害だと言えるのです。

例えば、長時間働く女性の中には不安定な雇用形態のため、一定の賃金を得るために長時間働く方もいますし、管理職としてバリバリ働く女性もいるかと思います。前者の場合は、暮らしにゆとりがなく、食生活にも影響が出やすいと考えられますし、後者の場合は、管理職という社会的な役割が増えることで時間的なゆとりが減り、食生活よりも仕事に重きを置くかもしれません。

女性の場合は、結婚や子育て、介護などにおいて、男性に比べて性別の役割分業規範の影響を受けやすいので、仕事と家庭の両立で健康にも影響が出やすいと考えられます。逆に、男性の場合は、単身者よりも既婚者の方が食事が整う傾向にあります。

PROFILE

女子栄養大学 栄養学部専任講師

林 芙美先生

はやし・ふみ 1999年米国デラウェア大学健康科学学部卒業後、米国ティーチャーズカレッジ・コロンビア大学健康行動学研究科へ、01年に米国登録栄養士、帰国後、08年に東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医学博士号を取得、09年から女子栄養大学食生態学研究室研究員、11年に千葉県立保健医療大学健康科学部栄養学科講師となり、15年からは女子栄養大学栄養学部専任講師を務める。著書に、『これならできる食生活改善』『アメリカにおける栄養モニタリング』『エッセンシャル栄養教育論』など。

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